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行列表示〜導入からPauli行列の導出まで

線形代数や量子力学では「線形写像/演算子を行列表示しなさい」という問題に出会います.

以下で「行列表示」とは一体何なのかを解説します.

行列表示とは?

結論からいうと,「演算子$\hat{A}$を基底$x_1,x_2,...,x_n$について行列表示せよ」とは,

$x_i$を$e_i= \left( \begin{array}{c} 0 \\ \vdots \\ 1\\ \vdots \\ 0 \end{array} \right) (i~~~ $と思ったときに,$\hat{A}$は行列でどう表わされるか考えよ

という意味です.*1


一般的に,行列$M$とベクトル$e_i$の間には
$$M=(Me_1,...,Me_n)$$
という関係があるので,「$\hat{A}$の行列表示$A$」は$\hat{A}x_1,...,\hat{A}x_n$を計算すれば求めることができます.
(以下でも$\hat{}$なしの$A$を,「演算子$\hat{A}$の行列表示」の意味で用います.)

実際,$\displaystyle \hat{A}x_i=\sum_j a_{ij} x_j$と表せるとき,$x_i$を$e_i$と思えば,$\displaystyle Ae_i=\sum_j a_{ij} e_j$ですから,
$$
A
=(Ae_1,...,Ae_n)
=
\begin{pmatrix}
a_{11}&\cdots&a_{n1}\\
\vdots&\vdots&\vdots\\
a_{1n}&\cdots&a_{nn}
\end{pmatrix}
$$
と$\hat{A}$の行列表示$A$が導かれます.


行列表示の例

Pauli行列の導出

これだけではイメージが湧かないとおもうので,例としてPauli行列の導出を考えてみましょう.
これはつまり,

スピン演算子$\hat{s}_x, \hat{s}_y, \hat{s}_z$を基底 $\{|+\rangle,|-\rangle\}$について行列表示しなさい.

という問題です.

スピン演算子を復習しておくと,$\hat{s}_x, \hat{s}_y, \hat{s}_z$は
$$
\hat{s}_x|\pm\rangle=\dfrac{\hbar}{2}|\mp\rangle,\quad
\hat{s}_y|\pm\rangle=\mp i\dfrac{\hbar}{2}|\mp\rangle,\quad
\hat{s}_z|\pm\rangle=\pm \dfrac{\hbar}{2}|\pm\rangle
$$
を満たすような演算子です.


従って,$|+\rangle$を$\left(
\begin{array}{c}
1 \\
0
\end{array}
\right)$, $|-\rangle$を$\left(
\begin{array}{c}
0 \\
1
\end{array}
\right)$と思えば,

$$
s_x
=\dfrac{\hbar}{2}
\begin{pmatrix}
0&1\\
1&0
\end{pmatrix},\quad
s_y
=\dfrac{\hbar}{2}
\begin{pmatrix}
0&-i\\
i&0
\end{pmatrix},\quad
s_z
=\dfrac{\hbar}{2}
\begin{pmatrix}
1&0\\
0&-1
\end{pmatrix}
$$

と行列表示できることがわかります.


ここで出てきた行列をPauli行列と呼びます:

Pauli行列
$$ \sigma_x := \begin{pmatrix} 0&1\\ 1&0 \end{pmatrix},\quad \sigma_y := \begin{pmatrix} 0&-i\\ i&0 \end{pmatrix},\quad \sigma_z := \begin{pmatrix} 1&0\\ 0&-1 \end{pmatrix} $$


*1:参考:数学では「同型写像により同一視している」といいます.