UNTITLED MEMORANDUM

あまり知られていないこと

$\dfrac{\sin x}{x}$はRiemann積分可能だが,Lebesgue積分は不可能!

RiemannとLebesgue積分の関係

RiemannとLebesgue積分の間には,以下のような関係があります:

  1. (狭義) Riemann積分可能な関数は,Lebesgue積分も可能.このとき,両者の積分は一致する.
  2. $f$が広義Riemann積分可能 (有限) でも,$f\geq 0$でないときには,Lebesgue積分可能とは限らない

2. の例として挙げられるのが,$\dfrac{\sin x}{x}$です.sinx/x
この関数は,$[0,\infty)$上で広義Riemann積分可能ですが,Lebesgue積分は不可能です.

以下で,詳しく見ていきましょう.


広義Riemann積分の計算方法

この広義積分
\begin{align}
\int_0^\infty \frac{\sin x}{x}\,\mathrm{d}x
=\lim_{\epsilon\to 0}\lim_{R\to \infty}\int_{\epsilon}^R\frac{\sin x}{x}\,\mathrm{d}x
\end{align}
は,例えば以下の方法で計算できます.

1. 複素積分
これは複素解析の本でよく見る,お馴染みの方法ですね.

2. Lebesgue積分論を用いて広義Riemann積分を計算

Lebesgue可積分でないこと

$k\in\mathbb{Z}$に対して成り立つ関係式
\begin{align}
\int_{2k\pi}^{(2k+1)\pi}\frac{\sin x}{x} \,\mathrm{d}x
&\geq \frac{1}{(2k+1)\pi}\int_{2k\pi}^{(2k+1)\pi}\sin x\,\mathrm{d}x\\
&= \frac{2}{(2k+1)\pi}
\end{align}
を用いれば,任意の$n\in\mathbb{N}$に対して
\begin{align}
\int_{[0,\infty)} f^+ \,\mathrm{d}x
&\geq \sum_{k=0}^n\int_{[2k\pi,(2k+1)\pi]}f^+ \,\mathrm{d}x\\
&\geq \sum_{k=0}^n \frac{2}{(2k+1)\pi}
\end{align}
となります.よって$n\rightarrow \infty$とすれば
\begin{align}
\int_{[0,\infty)} f^+ \,\mathrm{d}x
=+\infty.
\end{align}

同様に,
\begin{align}
\int_{[0,\infty)} f^- \,\mathrm{d}x
=+\infty
\end{align}
が示せるから,$f$はLebesgue可積分でない.


注意点

Lebesgue積分では広義Riemann積分の意味での
\begin{align}
\int_0^\infty \frac{\sin x}{x}\,\mathrm{d}x
\end{align}
を計算出来ないわけではありません!

というのも,$\dfrac{\sin x}{x}$はLebesgue可積分でないですが,
Lebesgue積分論を用いて広義Riemann積分
\begin{align}
\int_0^\infty \frac{\sin x}{x}\,\mathrm{d}x
=\lim_{\epsilon\to 0}\lim_{R\to \infty}\int_{\epsilon}^R\frac{\sin x}{x}\,\mathrm{d}x
\end{align}
を計算することはできるわけです.


この混乱の原因は,
\begin{align}
\int_0^\infty \frac{\sin x}{x}\,\mathrm{d}x
\end{align}
と書いただけではLebesgue積分なのか,広義Riemann積分なのか区別できないことにあります.

つまり,
\begin{align}
\int_0^\infty \frac{\sin x}{x}\,\mathrm{d}x
&=\lim_{\epsilon\to 0}\lim_{R\to \infty}\int_{\epsilon}^R\frac{\sin x}{x}\,\mathrm{d}x\qquad(\text{左辺が広義Riemann積分を表す場合})\\
\int_0^\infty \frac{\sin x}{x}\,\mathrm{d}x
&\neq\lim_{\epsilon\to 0}\lim_{R\to \infty}\int_{\epsilon}^R\frac{\sin x}{x}\,\mathrm{d}x\qquad(\text{左辺がLebesgue積分を表す場合})
\end{align}
であることに注意しなくてはなりません!